河野雅好の廃棄物・環境blog

指定有害廃棄物とはなにか

2024年04月15日 18:13

爆発性、毒性、感染性などにより人の健康や生活環境への被害が生ずるおそれがある廃棄物が「特別管理産業廃棄物」です。廃棄物処理法は「特別管理産業廃棄物」以外に、人の健康の保護や生活環境に係る重大な被害を生ずるおそれがある廃棄物として「指定有害廃棄物」を定めています。(廃棄物処理法16条の3)


「特別管理産業廃棄物」=被害

「指定有害廃棄物」=重大な被害


特別管理よりさらに危険な廃棄物が指定されているように見えます。ところが、指定有害廃棄物を定めた施行令15条は「硫酸ピッチ」のみを指定しています。「硫酸ピッチ」は水銀、六価クロム、PCB、飛散性アスベスト、ダイオキシン類などと比較してそれ以上に危険性が高いかというと、おそらくそれほどではないと思われます。この「硫酸ピッチ」の指定は、他の特別管理産業廃棄物とは少し異なった事情があるのです。


特別管理産業廃棄物は、事業活動に伴って排出される有害な廃棄物ということになります。事業にとって必要な工程から排出されるものであり、有用なものを生み出すための副産物であるといえます。一方、硫酸ピッチはどこから出るかといえば、不正軽油の製造工程からくらいしか普通は出ないのです。脱税目的で製造される不正軽油からの副産物である「硫酸ピッチ」が適正処理されるというのは考えられません。硫酸ピッチの処理費は非常に高く、そもそもまともな処理業者は処理しません。不正軽油製造の脱税による経済的メリットは、不法投棄の上にしか成立しません。不正軽油は、脱税+不法投棄という二重の犯罪なのです。


執筆者:河野雅好

廃棄物処理施設設置・生活環境影響調査を手掛ける環境コンサルタント

行政書士・環境計量士・公害防止管理者・測量士

株式会社Midori代表取締役

株式会社Midori